甲状腺ホルモンの生成・分泌過剰を伴って全身性の症状を呈する猫の甲状腺機能亢進症に対する治療法の一つに、甲状腺ホルモンの合成を抑制する抗甲状腺薬の投与(内服)が挙げられる。しかし、ご存知の方もおられると察するが、この薬剤の投与には、デメリットがあることが知られている。それは、投与された症例の20%前後に食欲不振や嘔吐などの副作用が発現することと、猫という生き物における経口投与の難しさだ—–。
そこで、ドイツのベルリン自由大学は、経口ではなく、「経皮」投与のために特別に調剤されたチアマゾールを甲状腺機能亢進症の猫(24匹)に投与し、その有効性および安全性を検証する試験的研究を行った。すると、副作用は認めずに、半数の症例(12匹)の血清T4値が3週間の加療によって、残り半数の約40%にあたる症例(5匹)のそれが8週間の加療によって、基準値(0.8~4.0 µg/dL)に収まることが明らかになったとのことである。
上記のことから、チアマゾールの経皮投与は、猫の甲状腺機能亢進症を改善する有効な治療法となり得ることが窺える。よって、今後、本研究で使用した薬剤の製品化が進み、世界各地で当該疾患に苦しむ猫、特に、経口投与を嫌がる個体に希望の光が差し込むことを期待している。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32234692