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猫の不妊手術で起きるインシデント「尿管損傷」の予後を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

改めて言うまでも無いが、犬や猫の不妊手術では、開腹(腹壁を貫通する)という処置が必要となり、そこには必ず卵巣・子宮の周囲にある臓器を損傷するリスクが付き纏う。中でも、特に尿路(尿管)の損傷は、術後の排尿障害を生じるキッカケを作り出し、最悪の場合、致死的経過を辿ってしまうこともあるため、細心の注意を払って避けるべきインシデントの一つとなっている。しかし、血管の損傷に伴う「分かりやすい」出血と比べると、尿管の損傷に伴う排尿障害は認識しづらく、その兆候を疑うタイミングが遅れ、手遅れになることも珍しくないのが現状である。

そこで、イギリスの王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)は、診療記録およびオーナーへの聞き取りによって、不妊手術を受けた犬猫における尿管損傷を疑う兆候を明らかにする研究を行った。すると、手術を機に尿管損傷を負った動物たちの約60%は麻酔からの覚醒(手術からの回復)が遅れ、約30%は術後16日(中央値3日)までに排尿障害を呈することが明らかになったとのことである。

上記のことから、犬猫の不妊手術において、『麻酔から覚めるまでの時間が長すぎる』と感じる症例に遭遇した場合には、自分自身の手技を顧みつつ、排尿の有無をモニタリングし、術後3日~16日の間に再診をすることが望ましいと思われる。

今回紹介した研究では、約15%の症例が死亡(斃死または安楽死)しているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31960426


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