ニュース

落葉状天疱瘡の犬におけるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の有用性に関する研究

投稿者:武井 昭紘

犬の落葉状天疱瘡(Canine pemphigus foliaceus、cPF)は、罹患個体の体内で表皮細胞間の接着分子に対する抗体が産生されることで発症する自己免疫性疾患で、頭部(鼻、眼、耳介)、体幹、肉球などに紅斑、膿疱、痂皮、びらんを呈する皮膚病である。故に、当該疾患の治療には、自己抗体の産生を抑え込むために、生涯に渡る免疫抑制剤の投与が必要とされている。一方で、人医療では、B細胞のシグナル伝達を担うブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton’s tyrosine kinase、BTK)を阻害する薬剤、いわゆる、BTK阻害剤(BTK inhibitors、BTKi)が自己免疫疾患に有効だとする報告が上がっている。

そのような背景の中、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアの大学らは、cPFの犬9匹にBTKi(名称:PRN473)を投与し、経過を観察する研究を行った。なお、同研究では、犬の天疱瘡の重症度を判定する基準(Pemphigus Disease Activity Index、PDAI)を用いて症例の経過観察が進められるとともに、自己抗体(文献をご参照下さい)の力価が測定されている。すると、2週間以上の加療にて全例のPDAIが減少し、デスモグレイン-1(desmoglein-1、DSG-1)に対する抗体が検出できなくなることが明らかになったとのことである。

上記のことから、PRN473は、cPFの臨床症状を軽快させる有用な薬剤になり得ることが窺える。よって、今後、大規模な臨床試験を経て、用法・用量に関するガイドラインが作成されつつ、PRN473が製品化されることに期待している。

今回紹介した研究では、9例中3例(約33%)に副作用が発現したとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31899567


コメントする