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伝染性腹膜炎に罹患した猫を快方に向かわせるヌクレオチド類似体GS-441524

投稿者:武井 昭紘

猫伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis、FIP)は、S遺伝子に変異を起こした猫コロナウイルスによって惹起される感染症で、現在、一般の動物病院に広く普及する有効な治療法は確立されておらず、罹患個体を高い確率で死亡させる非常に危険なウイルス性疾患として知られている。故に、FIPを発症した猫に「ウイルスと闘う力」を与えてくれる治療法の開発は獣医学の課題であり、多くの臨床獣医師の願いであると言って過言ではない。

そのような背景の中、カリフォルニア大学は、FIPに対するウイルスの核酸合成を阻害するヌクレオチド類似体GS-441524の有用性を明らかにする研究を行った。なお、同研究では、30匹以上のFIP症例にGS-441524が投与されており、その用量と効果の関連性が観察されている。すると、初回のクール(2.0 mg/kg SC q24h 12週間以上)で約58%の症例が回復し、次のクール(4.0 mg/kg SC q24h 2週間以上)で約16%の症例(このクールに参加した症例の100%)が回復することが判明したとのことである。

上記のことから、GS-441524は、FIPに対する有効な治療法の一つに成り得ると考えられる。よって、今後、GS-441524の「最適な投与量」を決定し、治療成績を更に向上する研究が進められることに期待している。

初回のクールにて、死亡または安楽死となった個体が5匹(約16%)に昇ったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30755068


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