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FIPを診断するリアルタイムPCRに用いるサンプルの採材部位について考えた研究

投稿者:武井 昭紘

猫伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis、FIP)は、Sタンパクをコードする遺伝子(S遺伝子)に突然変異を起こした猫コロナウイルス(feline coronavirus、FCoV)が病原体となって発症する感染症で、体腔内の液体貯留、内臓の障害、神経症状、眼症状など多様な病態を形成するウイルス性疾患として知られている。故に、理論上、FIPウイルスを直接的に検出する診断法が確立されれば、罹患猫を早期に、且つ、確実に特定でき、迅速に対症療法を始められるということになり、現在、IDEXX社が、FIPウイルスに対するリアルタイムPCR検査のサービスを展開するようになった。しかし、FIP症例の体の何処からサンプルを採取するかについては、未だ議論の余地が残されている。

そのような背景の中、ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン( Ludwig-Maximilians-Universität München、LMU )は、FIPの猫20匹を対象にして、様々なサンプル(リンパ節、肝、脾臓、腎、大網、全血、バフィーコート、血清、体腔貯留液、脳脊髄液、眼房水など)を採取し、リアルタイムPCRにてS遺伝子の変異を検出する試みを行った。すると、全頭から変異遺伝子が発見された一方で、同一個体でも、採材部位によって変異遺伝子の有無にバラつきがあることが判明したとのことである。

上記のことから、担当する症例において、FIPを診断するためのリアルタイムPCR検査を実施する際は、一ヶ所から採材するのではなく、複数の場所からサンプルを採ることが望ましいものと思われる。また、今後、リアルタイムPCR検査の利便性を更に高める(FIP症例から確実にS遺伝子の変異が検出される)ために、採材部位を決める指標となるガイドラインが作成されることに期待している。

本研究によると、最も変異遺伝子が検出されたサンプルは、体腔貯留液だったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31729897/


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