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猫の肝リピドーシスを治療する薬剤の発見に寄与するオルガノイド

投稿者:武井 昭紘

オルガノイドとは、in vitro(生体を使わずに細胞を用いる状態)で、特定の臓器を3次元的に再現して、その機能や薬剤への反応を観察する培養システムのことで、現在の医療では分かっていない発症メカニズムの解明や治療法の開発を後押しする技術の一つとして注目されているものである。一方、猫の肝リピドーシスは、肝臓にトリグリセロール(triacylglycerol、TAG)が蓄積して発症するとされているが、当該疾患の治療は、この蓄積に「直接」触れることはなく、栄養管理と合併症のコントロールを主体にしている。

そのような背景の中、オランダのユトレヒト大学は、猫の肝臓を再現したオルガノイドを用いて、肝リピドーシスを治療できるかも知れない薬剤の発見をする研究を行った。なお、同研究では8種類の薬剤が用いられ、オルガノイドにおけるTAGの定量および遺伝子発現が解析されている。そして、2つの薬剤(リンク先にてご確認下さい)がTAGの量を約半分まで低下させること、培地に含まれる脂肪酸に反応してペリリピン2(perilipin2、PLIN2)という脂肪の蓄積に関与する遺伝子の発現が増加することが判明したとのことである。

上記のことから、前述した2つの薬剤とペリリピン2の発現を制御する手法の組み合わせは、肝臓でのTAGの蓄積を押さえ込み、猫の肝リピドーシスが進行することを喰いとめることができる可能性を秘めているものと思われる。よって、今後、本研究で確認された現象が実症例でも起きるか否かを検証する臨床研究が、計画・実行されることを期待している。

今回紹介した研究が、猫の肝リピドーシスに対する治療に革新を齎すことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31830357


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