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皮膚糸状菌に感染した猫の被毛から効率良く採材できる方法を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

皮膚糸状菌は、猫に皮膚病を起こす病原体として広く認識されており、感染した皮膚病変を囲むように生える被毛を「抜毛」し、直接鏡検または培養にて観察することで検出できることが知られている。しかし、筆者は、担当する症例において皮膚糸状菌感染症を疑うも、なかなか上手くサンプルを採取できない新人獣医師の苦悩を見るにつけ、「抜毛」以外に、効率の良い採材方法が何かないものかと思うことが、しばしばである。

そのような背景の中、ブラジルのサンパウロ大学は、猫の被毛からMicrosporum canisを効率的に採取するための方法を検討する研究を行った。なお、同研究では、滅菌済みの①歯ブラシまたは②スクウェア型のカーペットを用いて、40匹程のペルシャから被毛が収集され、寒天培地にてサンプルを培養している(1匹の猫から2つのサンプルを採取)。すると、コンタミネーションはなく、全てのサンプルからMicrosporum canisを検出することに成功したとのことである。

上記のことから、①および②による採材は、猫の皮膚糸状菌感染症の診断ツールとして有用てあると考えられる。よって、自分自身の「抜毛」技術に疑問符が付いてしまう新人獣医師は、歯ブラシやカーペットの素材を使って被毛の採取にチャレンジすると、一筋の希望が見えてくるかも知れない。

本研究では、75%以上の猫が皮膚糸状菌感染症を疑う臨床症状を呈していたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31592711


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