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口腔内に黒色腫が発生した犬の予後を判定するマーカーの開発

投稿者:武井 昭紘

黒色腫は、中年齢以降の犬の口腔内に発生する最も一般的な非上皮性腫瘍で、無症状から潰瘍、壊死、二次感染、骨浸潤、転移までと、様々な病態を形成する特徴を有している。しかし、現代の獣医療では、病理組織学的検査を含めた各種臨床検査にて、黒色腫の挙動(悪性度と予後)を正確に把握することは容易ではなく、目の前に居る症例一つひとつが、どのような経過を辿っていくのかについて推定することが難しいという現状にある。

そこで、フランスの大学およびアイデックス社は、外科的切除が適応された口腔内腫瘍(黒色腫)の犬70匹以上の経過と腫瘍組織における第30染色体(CFA30)の増幅を観察する研究を行った。すると、CFAの増幅は、再発のしやすさ、分裂像や無色素を示す腫瘍細胞の出現と深く関わっているとともに、生存期間の有意な短縮に関連していることが明らかになったとのことである。

上記のことから、口腔内に黒色腫を発症した犬の予後を判定するマーカーとして、CFA30の増幅の有無を調べることが有用であると考えられる。よって、今後、アイデックス社を中心にして「CFA30増幅検査」が確立され、一次診療施設でも直ちに実践できる「黒色腫マーカー」が商業化されることを期待している。

同研究では、第10番染色体についても調べられているので、ご興味がある方は、文献を参照下さい。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31461207


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