ニュース

原発性緑内障を罹患した犬の眼球に起きている構造的な変化を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

眼の内部の圧力(眼圧)が高まる緑内障は、犬猫の眼科疾患として、更には救急疾患として一次診療でも比較的良く遭遇することのある病気である。また、当該疾患に陥った眼球は、進行性に上昇していく眼圧に伴って疼痛および視力障害を起こすため、徐々に、または、急激に光を失っていく特徴を有している。故に、緑内障は、早期発見・早期治療が望ましいのだが、初期の病態(眼圧が上昇し始めたタイミング)の変化は微細で、ペットオーナーや新人獣医師が的確に把握し、診断することは非常に難しいという現状がある。

そのような背景の中、オーストラリアのメルボルンおよびシドニー大学らは、①原発性緑内障(片側)と診断された犬12例と②臨床上健康な個体(13匹)における眼科検査結果から、緑内障に陥った眼球を認識するためのパラメータを探る研究を行った。なお、同研究では、一次診療でも用いられている検査機器ではなく、Optical Coherence Tomography(光干渉断層撮影、OCT)と呼ばれる光の干渉性によって試料・組織の断層を高い解像度で描出するシステムが採用されており、②よりも①で、網膜内層にあたる神経線維層の厚さが有意に減少していることが明らかになったとのことである。

上記のことから、OCTは、原発性緑内障を罹患した犬の網膜の構造変化を具に観察できる優れた検査法だと考えられる。よって、今後、更なる研究が進み、眼圧計や眼底鏡では認識が困難な「極めて初期」の緑内障を発見するツールとして、OCTが小動物臨床へと浸透していくことを願っている。

OCTは、犬の前眼部の厚さを計測する研究でも使用されておりますので、今後の臨床応用が大いに期待される技術であると思います。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31297979


コメントする