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猫におけるステロイドの副作用(生体に与える影響)について解析した研究

投稿者:武井 昭紘

『その薬、副作用が強くないですか?』

 

小動物臨床に携わり、ステロイド剤による治療を提案したことのある獣医師は、多かれ少なかれ、このような疑問をペットオーナーから投げ掛けられたことがあるのではないだろうか。無論、自分自身の経験や上級獣医師からの指導を基にして、明確なインフォームド・コンセントにて回答を提示できているのならば、筆者からアドバイスをすることは特段無いのだが、答えに苦慮するという先生方は、本稿で紹介する研究を参考にして、これからの診療業務に活かして頂きたいと思い、筆を執った—–。

 

2019年8月、アイオワ州立大学は、猫にステロイド(プレドニゾロン)を投与した際に起きる血行動態および血液性状の変化を追跡した研究を発表した。なお、同研究では、以下の3つのグルーピングにて、収縮期血圧、一般血液検査、pro-BNP、心エコー図検査が実施されている。

◆本研究における3つのグルーピング◆
①臨床上健康な猫で構成した対照群(無治療群)
②アレルギー性皮膚炎の猫に抗炎症用量(1mg/kg)を投与した群
③アレルギー性皮膚炎の猫に免疫抑制用量(2mg/kg)を投与した群

注:②と③では、7日間のステロイド剤投与後、ステロイドを9日間で漸減し、14日間でウォッシュアウトしている。

 

研究の結果、同大学によると、3群の中のうち、2mg/kgでステロイド剤を投与していた期間、つまり、③の最初の7日間を除いて、何れの検査項目にも、群間における有意差が確認されなかったとのことである。

上記のことから、猫のオーナーにステロイド剤の副作用について問われた時は、抗炎症用量(1mg/kg)であれば顕著な副作用が生じにくい旨を説明できると思われる。よって、本研究も参照しつつ、且つ、自らも臨床現場でデータを集積しながら、ステロイド剤の副作用に関する情報をアップデートし続け、オリジナルのインフォームド・コンセントを追求して頂けると幸いである。

②に免疫抑制用量のステロイド剤を投与した7日間では、血糖値とpro-BNPが優位に上昇していたとのことです。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/ajvr.80.8.743


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