小動物臨床において、ペットが動くと実施できない検査・治療、そして、外科手術などでは、鎮静または麻酔によって、診療対象動物を「動かない」状態にすることが通例となっており、その際に、気道を確保するための対策として、気管チューブの挿管が選択されることがある。
この時、必ずと言って良い程に、新人あるいは経験の浅い獣医師が悩みに悩む共通事項が一つあるように思える。
それは、「気管チューブのサイズ選び」である。
おそらくは、多くの獣医師が、咽喉頭に続く気管の太さを基にしてチューブサイズを決定していると勝手ながらに推察しているのだが、筆者の眼には、これが、『なかなか症例に適した気管チューブを選べない』、『他に方法は無いのだろうか?』といった大きな悩みの種になっているように感じるのだ。
そこで、本稿では、2019年8月にカナダのカルガリー大学が発表した研究から、前述のような悩みを解決する糸口を探ることにする。なお、同研究では、約80匹の犬に協力を仰ぎ、過去に報告の上がった「気管チューブのサイズ選び」に関する文献に記載されている以下の手法の精度を比較している。
◆気管チューブのサイズを算定する方法◆
①両鼻孔の幅の合計
②鼻中隔の幅
③両鼻孔と鼻中隔の幅の合計
④鼻の幅と高さの合計
⑤気管の幅
⑥肉球(中手と指)の幅と高さ
⑦体重
但し、初めに、誠に残念ながらと断っておくが、今回紹介した研究の結果では、①~⑦の何れの方法も、他と比べて高い有用性を示したものはなかった。しかし、カルガリー大学は、本研究を通して「編み出した」チューブサイズのシンプルな、且つ、新しい計算方法を論文の最後に提唱して結びとしている。
「適した気管チューブのサイズ = 鼻の幅の3分の1」
もし、仮に、読者の皆様の中に、「気管チューブのサイズ選び」に頭を抱えている方がおられたならば、是非とも、この簡素化された計算式を使って、自分自身の悩みが解消できるか否かについてチャレンジして頂けると幸いである。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31391601/