◆慢性表在性角膜炎(本稿ではパンヌスという略称を用いる)とは◆
角膜の表層に血管新生を伴った白濁や肉芽組織の形成を生じ、最終的には失明に至る感覚器の病気で、好発犬種としてドイツ原産の大型犬ジャーマン・シェパード・ドッグが第一に挙げられる眼科疾患である。また、このパンヌスは、紫外線指数の高い地域に住む犬に起こりやすく、免疫機能の異常に起因する角膜の炎症が病態形成に大きく関与していると考えられており、抗炎症なしいは免疫抑制作用を有する点眼によって治療されることが多い。しかし、現在の獣医療では根治は望めず、生涯に渡る加療を要することになる。
そして、図らずも、当該疾患に罹患したジャーマン・シェパード・ドッグが、アメリカとメキシコの国境に程近いテキサスA&M大学の付属動物病院へと運ばれた—–。
と、ここまでは、一次診療でコントロールが難しくなった症例が高次診療に移されたということであり、目を見開くような驚きの事実ではなく、本国でも容易に想定される経過かも知れない。だが、同大学は、効果的な治療に加えて、ある予防対策を講じており、それは、リンク先の画像をご覧頂ければ一目瞭然かと思うが、罹患犬にサングラスを掛けることであった。なお、このサングラスは、カリフォルニア州フェアオークスに拠点を構えるDoggles社がリリースしているペットグッズで、紫外線を100%カットする優れ物だとのことである。
上記のことから、テキサスA&M大学の試みが功を奏せば、慢性表在性角膜炎を発症しやすいジャーマン・シェパード・ドッグの眼を専用サングラスで守る予防医療が実現するかも知れない。よって、今後の経過報告に注視し、朗報が発表されることを期待したい。
参考ページ:
vetmed.tamu.edu/news/press-releases/a-brighter-future-for-sadie/