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ジャーマン・シェパード・ドッグの股異形成に深く関与する遺伝子の発見

投稿者:武井 昭紘

ドイツ原産で警察犬などのワーキングドッグとしての活躍が目覚ましく、家庭犬としての人気が高い大型犬であるジャーマン・シェパード・ドッグは、前肢よりも後肢の方が短く、背中に「傾斜」を有する品種であり、その傾きは、ドッグショーにおける「美しさ」の一つとして高評価を獲得していることが知られている。一方で、当該品種は、前述した美の追求による種の繁栄のツケを払うかのように股関節のトラブル(股異形成)を抱えやすく、これを理由に、安楽死させられる個体が後を絶たないという苦境に立たされていることも獣医学的に有名である。しかし、傾斜と股関節のトラブルに纏わる遺伝的背景については不明な点が多く、動物福祉の向上を図る際に克服するべき課題点となっている。

そこで、ヘルシンキ大学は、500頭を超えるジャーマン・シェパード・ドッグを対象にしてゲノムワイド関連解析を実施し、股異形成に関わるかも知れない遺伝子の探索をする研究を行った。すると、臨床上健康な個体と軽度な股異形成症例において、骨形成タンパク質の合成を阻害するNOG遺伝子の欠失(deletion)が認められたとのことである。

上記のことから、「欠失の無い」NOG遺伝子は、股異形成の「病態悪化」に関与していることが考えられる。よって、今回紹介した研究を基に、NOG遺伝子の機能を低下させる技術が開発され、ジャーマン・シェパード・ドッグの股異形成の発症を予防する方法の確立が現実味を帯びることを期待している。

ジャーマン・シェパード・ドッグの「傾斜」とNOG遺伝子の関連性も解析されていくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31323019/


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