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ペットの輸血療法における血液の絶対的な不足の原因を追究した調査

投稿者:武井 昭紘

輸血療法とは、一定程度以上の出血を伴う外科手術、体外へと多量の血液が流れ出すケガ、溶血性疾患など、酸素を全身に運ぶ赤血球が失われていく様々な事象によって起きる生命の危機を脱する(回避する)ために実施される一般的な治療手段である。しかし、人医療と比べると、獣医療における輸血療法には、「絶対的な輸血用血液の不足」が先の見えない大きな壁として立ちはだかっており、本来の適応症例に輸血療法が行えないことも珍しいことではない。

 

この現状を打破するために理解すべき「隠された真実」とは一体、何なのか?

各国のペット事情に合わせて、多角的な視点から調査を繰り返し、少しずつ明らかにする必要があると思われる。

 

そのような背景の中、イギリス国内でペット事業を展開しているVets4Pets、全英に輸血用血液を届けるべく活動する慈善団体Pet Blood Bankらが、輸血・献血に関するペットオーナーの意識を調査し、以下のように発表した。

◆輸血・献血に対するペットオーナーの意識調査結果◆
・ペットを飼育している世帯の40%しか、愛犬がドナーになれることを知らない
・約30%のオーナーが、献血中に愛犬が恐怖体験をするのではと心配している
・27%のオーナーが、献血中に愛犬が負傷する(ケガをする)と思っている
・20%のオーナーが、献血後に愛犬の体調が崩れることを懸念している

 

これらの調査から、ペットの輸血療法が周知されていないこと、献血へのネガティブなイメージがペットオーナーの頭に浮かびやすいことが、絶対的な輸血用血液の不足の一因であることが窺える。よって、ドナーを増やし、一匹でも多くの命を救うためには、小動物臨床で取り組まれている献血活動・輸血療法の意義、安全性、課題点(ドナーにとってのメリット・デメリットを含む)を啓蒙するイベントの開催やSNSを介した情報発信を積極的に行うことが大変に重要であると考えられる。

ヒトが献血をする場所にペットの輸血療法を紹介するポスターを貼ることも、一つの啓蒙になるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.vetclick.com/news/joint-effort-to-raise-awareness-of-pet-blood-donation-p5818.php


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