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犬の子宮疾患の早期発見を目指した「予防的」超音波検査法

投稿者:武井 昭紘

子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、前立腺疾患、精巣腫瘍など、小動物臨床で比較的よく遭遇する生殖器疾患の一部は、加齢に伴って罹患率(発症リスク)が高まるとされており、一定年齢以上の個体における健康診断の際には、重要なチェックポイントとなっている。しかし、その健診に適したタイミングに関して明確な数字(年齢)が設定されていないことが現状であり、ミラノ大学の「犬の前立腺疾患を検出する予防的超音波検査法」のように、一つずつの疾患に丁寧に焦点を当てて検証し、議論を尽くしていくことが重要であると思われる。

前述のような背景の中、スイスに程近いロンバルディア州ヴァレーゼに位置するイタリアの動物病院は、犬の子宮疾患を早期に発見するための「予防的超音波検査法」について研究を行った。なお、同研究では、200匹を超える犬における超音波検査データが解析されており、①子宮内膜過形成、②子宮内の液体貯留、③腫瘤病変の3つの所見の有無と、当該所見が認められた年齢を用いて、健診を始める適したタイミングを算出している。その結果、品種別に設定されている寿命の約3割の年齢に達した時が、最も適した健診の時期であることが判明したとのことである。

上記のことから、獣医師個々人が現在担当しているメス犬のオーナーから子宮疾患に関する健診のタイミングを問われた際には、今回紹介した研究で提唱している時期を参考に、インフォームド・コンセントしてみると良いのかも知れない。

麻酔・手術に付き纏うリスクを不安に思い、子宮卵巣全摘出術を愛犬に受けさせない選択をしたオーナーに対して、本研究が「提示できるデータの一つ」なれば幸いです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31187907


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