スコットランド(イギリス)を原産とする小型犬であるケアーン・テリアは、一次診療における幼少期の健診時に心雑音を聴取することが珍しくない犬種として知られている。しかし、前述の心雑音は、自然に消失していく特徴を有しており、「innocent cardiac murmurs」、いわゆる無害性雑音と称され、治療する必要は無いとされている。ところが、この雑音が消失するタイミングについて記述された報告は存在していないため、経過を追跡する期間の目安も不明のままで、心配するオーナーへのインフォームド・コンセントに用いる安心材料が不十分であると言わざるを得ない。
そこで、ユトレヒト大学は、200匹を超えるケアーン・テリアの子犬(2ヶ月齢前後)から無害性雑音が聴取できる個体を特定し、対象となった17匹の無害性雑音が消失する時期を明らかにする研究を行った。すると、無害性雑音は約3ヶ月齢の頃に消失する例が多く、最短で2.5ヶ月齢、最長で11.5ヶ月齢で聴取できなくなることが明らかとなったとのことである。
上記のことから、1歳を迎えた時には、当該雑音は消失すると言えるのではないだろうか。よって、幼いケアーン・テリアの無害性雑音を経験した獣医師は、オーナーを安心させるために、同研究のデータを提示して、聴診を主とした次回の健診を「1歳を過ぎた日」に設定することが望ましいものと思われる。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31113558