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小動物臨床で実施されたリピドミクス~ステロイド投与後における犬の体内にある脂質分子の解析~

投稿者:武井 昭紘

リピドミクスとは、生体内に存在している脂質分子(リピドーム)を詳細に解析する手法のことで、新しい医薬品や疾患特異的マーカーの開発をも期待できる研究分野であるとされている。一方、小動物臨床で頻用しているステロイド系薬剤は、多岐に渡る主作用(抗炎症、免疫抑制、抗ショックなど)を有するとともに、様々な副作用(多食多飲多尿、肝酵素・血糖値の上昇、高脂血症など)が発現しやすい特徴を有しており、同薬剤を投与された動物における「薬理学的な負担」を客観的に評価するための指標・ガイドラインの作成が常に望まれている現状にある。このように前述した2つの事象を総合して仮定を導き出すと、ステロイド系薬剤投与後の動物におけるリピドミクスを実施することで、「薬理学的な負担」の数値化が可能となるのではないかと考えることができる。

そこで、チューリッヒ大学(スイス)およびシンガポール国立大学は、①短期的ないしは②長期的にグルココルチコイドを過剰に投与された犬を対象にして、リピドミクスを行った。すると、両群ともに、血漿中に含まれるリピドーム(種類は文献をご参照下さい)が変動しており、①よりも②の方が、より顕著な変化を伴うことが明らかになったとのことである。

上記のことから、リピドミクスは、ステロイド系薬剤の脂質代謝への影響を推し量る手法として有用であると思われる。よって、今後、研究が進み、リピドミクスを用いた「副作用判定法」が確立されていくことを願っている。

一次診療で汎用されているプレドニゾロン投与後の犬におけるリピドミクスについて検証されることも期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30979907


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