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慢性腎臓病の猫を飼育するオーナーへ向けた無料・無償獣医療サービス

投稿者:武井 昭紘

家庭で飼育されている高齢の犬猫は、心臓、腎臓、関節など、実に様々な器官・組織の機能が低下し、または、腫瘍化して、加齢に伴った疾患を患うことが知られている。故に、定期的な健康チェックやモニタリングを繰り返し、病気の早期診断・早期治療へと結び付けることが非常に重要であり、そのサポートを動物病院に所属する獣医師が行うことが望ましいと考えられる。しかし、一方で、原則、「診察」には安価とは言えない相応の費用が掛かることが通例となっており、これを要因にして、ペットオーナーが動物病院を訪れることを躊躇うという現状が横たわっていることも事実である。

そこで、イギリスの王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)の取り組みを紹介し、上記のジレンマを少しでも解消する策を考えてみたい。

同大学は、ホームページ上にて、以下に示す条件に合致した腎臓疾患を罹患している高齢(9歳以上)の猫を所有するオーナーへ向けて、腎臓用療法食の無償提供を伴った無料健康診断(無料の経過観察)を提供するサービスへの参加を呼び掛けている。なお、検査費用と処方薬は有料とのことである。

<RVCが取り組む高齢猫への獣医療サービスの適応条件>
・療法食を給与されていない慢性腎臓病
・甲状腺機能亢進症
・無治療の高血圧症
・列挙した疾患を疑われている症例
・当該疾患以外(糖尿病など)を抱えている個体は除く

上記のことから、このサービスは、高齢猫特有の病気に悩むオーナーを勇気づけ、強力にバックアップする素晴らしいシステムではないかと思われる。よって、本国でも、「持続的に」医療費が高騰しやすい猫の慢性腎臓病に対するケアにおいて、全ての症例が「継続的に」治療を進めていくために、何かを無料・無償にする獣医療サービスの考案・検討は必要なのではないだろうか。

多岐に渡る犬猫の慢性疾患に掛かるオーナーの経済的負担を軽減していく動物病院独自のアイデアを考案し、実践することは、来院件数を増加させる起爆剤になるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.rvc.ac.uk/beaumont-sainsbury-animal-hospital/practice-services/geriatric-feline-clinic


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