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犬の肥満細胞腫を発症するリスクを高める遺伝子を特定した研究

投稿者:武井 昭紘

一次診療で比較的よく遭遇する犬の肥満細胞腫(Mast cell tumours、MCT)は、実に多岐に渡る悪性度を示しつつ、皮膚または皮下に発生する特徴を有し、病変の大きさ、転移の有無、c-kit遺伝子の変異などが総合的に判断されて治療方針が決まる腫瘍性疾患である。しかし、MCTの発生リスクを高める因子について、いまだ全容は解明されておらず、今後の獣医療が克服するべき課題の一つとなっている。

そこで、ヨーロッパおよびアメリカの大学と研究所らは、MCTの好発犬種であるラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバーの遺伝子を解析して、前述した「謎」に迫る研究を行った。すると、第31番染色上に位置して細胞接着分子をコードするDSCAM遺伝子に変異が確認でき、この変異がDSCAMタンパクの生成を低下させるとともに、肥満細胞腫の発生に深く関与していることが明らかになったとのことである。

上記のことから、DSCAM遺伝子に関する更なる研究を進めば、MCTの発生を予防する遺伝子治療の確立、ないしは、MCTに罹患しにくいブリーディング計画の作成が実現することが期待できる。よって、前述した2犬種以外の品種においても、DSCAM遺伝子とMCTの関連性の有無が検証されていくことを願っている。

DSCAM遺伝子の変異を検査する手法が商業化されれば、将来的に、MCTの発症予測も出来るようになるのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30901340


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