犬の慢性腸症(chronic enteropathy、CE)は、腸管に慢性的な炎症を伴って、嘔吐・下痢を発現する消化器疾患の総称で、腸管粘膜における免疫系細胞のバランスの乱れが一因であるとされている。故に、腸粘膜組織の病理学的な細胞成分の解析が、病態の全容を詳細に把握するために大切であり、CEないしは炎症性腸疾患(IBD)を、多角的な視点から、且つ、新人獣医師とペットオーナーにも理解しやすい「再分類」へ導くものと考えられる。
そこで、今回も、CE・IBDの再分類に活用できるかも知れない研究を紹介したい。
2019年2月、テキサスA&M大学らは、好酸球由来のペルオキシダーゼが働いた時に産生される物質である3-bromotyrosineの血清中濃度(3-BrY)に着目して、①臨床上健康な犬と②CE罹患犬での相違点を検証する研究を行った。すると、①に比べて、②の3-BrYは有意に高い値を示すことが明らかになったとのことである。
上記のことを基に、更なる研究が進められ、3-BrYと、CEの治療反応性(抗生剤、ステロイド、食餌)や予後との間にある関連性が詳細に分析されれば、CEを疑う症状を呈している犬の診療・治療方針を客観的に決定する指標が確立されるのではないだろうか。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30767618