ニュース

食餌反応性下痢症の糞便から特異的に検出されるタンパク質に関する研究

投稿者:武井 昭紘

犬の炎症性腸疾患(IBD)は、小動物臨床で最も良く遭遇する消化器のトラブルの一つとされているが、現在でもなお、原因、病態、治療反応性などによる細分類は達成されておらず、統一感の無い「様々な病気の総称名」という印象が否めない。故に、多角的なアプローチによって細分類を試みる研究を続けることが、今後の獣医療の発展には欠かせないと考えられ、本サイトでも度々、それを実現するかも知れない文献を紹介させて頂いた。

 

そのような背景の中、2019年1月、イタリアの大学らが、ある挑戦的な研究を発表した。

なお、同大学らによると、犬の糞便を用いたプロテオーム解析(タンパク質の構造・機能の解析法)の結果、IBDの1種である食餌反応性下痢症(food responsive diarrhea、FRD)に罹患した症例のみで、J鎖アイソフォーム1と呼ばれる免疫グロブリンが検出されるとのことで、大学らは、FRDにおける診断・予後マーカーの開発または病態の解明へ向けた第一歩を踏み出せたとしている。

また、上記のことから、このJ鎖アイソフォーム1は、IBD症例の中からFRDを鑑別・除外するツールとして有用であることが予想でき、将来的に、新しい糞便検査(J鎖アイソフォーム1の検出)が商業化されることとなれば、IBDの細(再)分類が進むことが期待できるのではないだろうか。

J鎖という免疫グロブリンは、IgA単量体2つを結合させて、二量体を形成するために機能するタンパク質であるとのことです。

 

参考ページ:

https://www.hindawi.com/journals/tswj/2019/2742401/


コメントする