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犬の尿失禁を起こす世界初の原因を特定したケースリポート

投稿者:武井 昭紘

犬猫における不適切な排尿・尿失禁は、尿路感染症、神経・筋疾患、問題行動などによって引き起こされる臨床症状であるとともに、一部のオーナーにとって「飼いづらさ」の原因ともなってしまい、特に、海外では安楽死の決断へと至ることもある泌尿器系のトラブルとしても広く認識されている。それ故、安楽死件数を減少させるために、不適切な排尿・尿失禁へと繋がるファクターの全容解明と、当該疾患の治療法の確立は、獣医療が克服するべき重要な課題の一つであると言える。

 

そこで、2019年1月、イスラエル大学らが報告したケースリポートを紹介したいと思う。

なお、同大学らによると、6歳齢の犬(メス)が1年ほど前から尿失禁を患っていたため、各種臨床検査の後、試験開腹をした結果、膀胱が有する尿を貯める機能を阻むように嚢胞が形成されており、嚢胞の遺伝学的解析からMesocestoides vogaeという条虫類の寄生が確認されたとのことである。

これを受け、イスラエル大学らは、本症例が犬の腹膜幼虫条虫症(canine peritoneal larval cestodiasis、CPLC)を呈していたことと、世界初の円葉目条虫類によるCPLCであったことを発表している。

 

上記のことから、2013年に初めて日本国内の犬への感染が認められたMesocestoides vogaeの分布域を調査し、尿失禁を抱える犬を対象にしたCPLCに関する臨床研究を実施することが、ペットの命を安楽死から守り、オーナーのストレスを大幅に軽減するために、急務であると考えられる。

今回紹介したリポートの犬は、プラジカンテルではなく、フェンベンダゾールの投与によって、臨床症状が改善したとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30685781


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