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関節内の軟骨細胞を局所麻酔薬の副作用から守る細胞学的研究

投稿者:武井 昭紘

感染、筋骨格の異常、加齢など、本稿では挙げ切ることの出来ない、実に様々な原因によって、関節炎・関節痛は生じることが知られており、特に、病態の進行に伴う軟骨組織の損傷に起因した関節疾患に対しては、何らかの鎮痛処置を施す必要があるとされ、その中でも、局所麻酔薬(リドカイン、LD)の関節内注射は、侵襲性の低い優れた疼痛管理として期待されている。しかし、LDには細胞毒性があるとする報告が上がっており、軟骨組織の細胞死を誘導してしまう有害事象への対策が急務の課題となっている。

そこで、イタリアのペルージャ大学は、犬の軟骨細胞とLDをin vitroにて培養し、細胞死の実態と制御方法について研究を行った。すると、LDは有意に軟骨細胞の細胞死を引き起こすとともに、その現象は多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)にて抑制できることが明らかとなった。

上記のことから、関節内注射に用いる局所麻酔薬の選択を「細胞死」の観点から選び直すとともに、PRPを併用した関節疾患の疼痛管理にかかる臨床研究およびガイドラインの作成を進展させることが重要であると思われる。

軟骨組織に細胞死を起こさない局所麻酔薬の開発または調剤法に関しても、研究が進められることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30367652


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