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猫の皮膚に発生する肥満細胞腫のグレード分類に関する研究

投稿者:武井 昭紘

猫の皮膚に発生する肥満細胞腫(cutaneous mast cell tumors、cMCT)は、皮膚腫瘍全体の20%前後を占める一般的な疾患とされている。しかし、犬のcMCTで確立しているような標準化されたグレード分類は存在しておらず、予後を判定するための材料が非常に乏しく、獣医師にとっても、ペットオーナーにとっても、大小の差こそあれ主観や経験によって病態が左右されてしまう印象が否めないという現状がある。

そこで、イタリア北部ミラノに程近いボローニャ大学は、猫のcMCT症例における術後経過と病理組織学的所見との間にある関連性を明らかにする研究を行った。なお、同研究では、①腫瘍塊の外科的切除から1000日目まで再発しなかった群と②転移または再発した(ハイグレード)群の2つに症例をグルーピングしており、以下に示す相違点を発見している。

◆猫のcMCTにおける術後経過と病理学的所見◆
・②は10個のhpf(ハイパーフィールド)に5つ以上の核分裂像がある
・②は論文に記載する悪性度チェックポイントの2つ以上に該当する
・①に比べて②の生存日数は約3分の1に減少する

上記のことより、猫のcMCTに対するグレード分類も規格化できるものと考えられるのではないだろうか。また、外科手術を起点に描かれた本研究が今後、化学療法、品種、年齢、性別、外傷歴などの様々なアプローチへと形を変え、グレード分類の内容に深みが追加されていくことに期待したい。

猫のcMCTのグレード分類が確立された後、再発の可能性を予測する因子についても解析されていくことを願っております。

 

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