現時点で定義・ガイドラインともに確固たる文言が設定されていない小動物臨床の敗血症は、インターズー社発刊のCLINIC NOTE No.134(入江充洋氏著)によると、「感染を伴う」全身性炎症反応症候群(infection induced SIRS)と捉えられる病態とされている。つまり、生体の何処かに局所的な①感染や②炎症が生じれば、敗血症に陥るリスクも発生していることになる。故に、敗血症へと繋がる①②の全容を一日でも早く把握することが、獣医療のレベルを底上げするために必要なことと言えるのではないだろうか。
そのような背景の中、イギリスの王立獣医科大学らは、敗血症を伴う関節炎に罹患した犬21例の検査所見および治療経過をデータ化し、以下に示す通りの結果を得ている。
◆敗血症性関節炎を呈した犬におけるデータ解析◆
①全症例にて関節液中の好中球が増加する
②約70%の個体が肘に関節炎を生じていた。
③培養試験で病原体が検出されるのは全体の約半数である
④③の20%にて感染症が再発した
⑤治療後に跛行スコア(10段階評価)は3分の1に減少する
⑥約10%(2匹)が斃死している
上記のことから、コントロールの難しいまたは再発を繰り返す関節炎を抱える犬を担当する獣医師は、鑑別疾患に敗血症をリストアップするとともに、斃死リスクがゼロではないことを念頭に置いて診療業務を進めることが望ましいと思われる。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30300912