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地域に暮らす人々の協力を得て実現したアフリカの狂犬病根絶プログラム

投稿者:武井 昭紘

ペットを飼育するルールは、各国の文化または地域の考え方によって様々で、犬猫のマイクロチップ装填やワクチン接種を実施するように義務付けしている場合もあれば、フリーローミング(放し飼い)が習慣化している場合もある。ただし、ヒト・動物が発症すると死亡するリスクが高まる狂犬病の撲滅を念頭に置くと、フリーローミングによって犬を飼育する環境では個々体を追跡しづらいため、安定した予防医療の提供が非常に難しいという防疫上の危険な側面を持っていることは否めない。

そこで、ある取り組みを紹介したい。

アフリカの東部、インド洋沿岸に位置するケニアのカウンティ(行政区)の一つ、マクエニでは、フリーローミングによって犬が飼育されており、前述した課題点を抱えている。しかし、犬の行動範囲を詳細に把握している者が居ることで解決の糸口を掴んだ点において、特筆すべき事象となった。なお、その者とは、訓練されたレンジャーや感染症研究の専門家ではなく、マクエニに暮らす子供たちで、現地を遊びまわって「犬の居場所」を掌握し、狂犬病ワクチンの接種時期を迎えると犬を集めてくれるとのことである。

上記のような狂犬病根絶プログラムは、マイクロチップよりも遥かに強力な追跡手段に裏打ちされた再現性の極めて高いシステムのように思える。また、予算次第とはなってしまうが、狂犬病の発症リスクが付き纏う地域に雇用を生み出すとともに、One Healthの実現も目指せる「次世代の予防医療」の姿が映し出されているとも言えるのではないだろうか。

世界各地で実施されている猫の不妊・去勢手術プログラムにも、今回紹介した「地域協力システム」が応用できるかも知れません。

 

参考ページ:

https://healthforanimals.org/storyofanimalhealth/the-long-walk-towards-rabies-eradication.html


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