猫免疫不全ウイルス(feline immunodeficiency virus、FIV)は、個体の免疫機能を抑え込み、二次感染を生じやすい状況を作り出してしまう特徴を有するのだが、これに関与する病原体は症例ごとに異なるため、罹患猫の臨床症状を予測することは困難を極める。つまり、視点を変えて前述の背景を捉えると、二次感染の原因(候補)を特定する手法が確立されれば、今後の治療方針をケースバイケースで検討できるようになるはずである。
そこで、シドニー大学らは、特殊な遺伝子配列決定法(High-throughput transcriptome sequencing)を用いた二次感染予測プロジェクトを立ち上げ、以下に示す結果を発表した。
◆FIV感染症における二次感染を起こす新しい病原体◆
①FIVに感染した猫(7歳齢、去勢オス)に発生したリンパ腫をサンプルとした
②①からヒトのB型肝炎ウイルスに近縁の新しいウイルスが検出された
③②を猫ヘパドナウイルスとして報告する
④FIVに感染していない個体よりも、感染している個体の方が③を保有している
上記のことから、High-throughput transcriptome sequencingは、「二次感染の予測」の実現および「未知の病原体の検出」に有用な技術として期待できる。また、FIV感染症で起きるリンパ腫をコントロールするために、猫ヘパドナウイルスの増殖抑制が、一つの治療法(病態を進行させない予防医療)へと発展していくことを願っている。
参考ページ:
http://www.mdpi.com/1999-4915/10/5/269/htm