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ニューヨークタイムズが発表した犬猫の回虫に関する疫学と危険性

投稿者:武井 昭紘

犬猫に感染する寄生虫として、心臓に入り込むフィラリア、皮膚病の一因となり得るノミは、一般の方にも良く知られているが、犬回虫・猫回虫など、消化管内寄生虫の存在は認知度が低いため、積極的な啓蒙活動を継続することが、小動物臨床全体の課題と言える。その理由は非常にシンプルで、犬猫の消化管内寄生虫の一部はzoonosisに位置付けされ、アメリカ疾病予防センター(CDC)が警鐘を鳴らし続けるとともに、アメリカの総人口の約5%に相当する1600万人がトキソカラ症を罹患しているとの報告も出されているからである。

上記のような背景から、ニューヨークタイムズは、今年1月、回虫の脅威に関するオンライン記事を発表した。同誌によると、ニューヨーク市の公園21ヶ所のうち、9ヶ所から回虫卵や幼虫が検出されたとのことで、幼い子供への感染が高まっているという結果となった。また、CDCの調べでは、小児科医の85%がトキソカラ症を知っているが、迅速に診断を下せるドクターは50%に満たない(患者や家族が典型的な症状を訴えた上での確率)とされている。

このヒトのトキソカラ症は、学力低下や失明など、深刻な病状を引き起こす危険な感染症でもある。故に、今後、世界各地で、①屋外公共施設における回虫の疫学的研究および②感染リスクの高い地域に住む子供の学力調査も本格的に進める必要があるのかも知れない。

区や市などの地単位で、自治体、企業、動物病院が一体となって、地域的な回虫の疫学的調査と予防対策が進めていけるシステムが構築されることを願っております。

区や市などの単位で、自治体、企業、動物病院が一体となって、地域的な回虫の疫学的調査と予防対策が進めていけるシステムが構築されることを願っております。

 

参考ページ:

www.nytimes.com/2018/01/16/health/toxocara-children-new-york-playgrounds.html


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