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英国内の犬に初めて確認された眼に寄生する病原体

投稿者:武井 昭紘

ある感染症が、歴史的に記録されていない、または、一定期間報告されていない国を「清浄国」と呼ぶ。この清浄国の条件をクリアすることは、経済効果を生む流通を維持すると同時に、ヒト、小動物、大動物の命を守ることにもなるため、各国は、是が非でも、多様な感染症に対する防疫対策を整備していくことを重要と考えているはずである。しかし、ヒト、動物、貨物を移動させる技術が発展し続ける現代社会では、予期せぬ感染症の拡大(清浄国リストから外れてしまう事象)が、いつ発生しても不思議ではない状況となっている。

今年の9月末、上記の懸念が現実となった事例が、イギリスから報告された。今回、「英国内で初めて」確認された感染症は、アジアおよび一部のヨーロッパでは既知の病原体であり、東洋眼虫(Thelazia callipaeda)と呼ばれる。また、感染した個体は3件で、以下に示す通り、ヨーロッパ諸国に滞在していた時期があることが判明している。

◆英国内初の犬の東洋眼虫感染症における渡航歴◆
1.ルーマニアからの輸入 1例
2.イタリアへ旅行して帰国 1例
3.フランスへ旅行して帰国 1例
そして、この寄生虫は、イギリスに生息するハエの仲間であるPhortica属によって媒介される可能性があるため、感染拡大が不安視されている。

上記のような東洋眼虫は、ヒトに感染すると、眼症状(痒みなど)を呈し、重症例では視力障害を起こすことが知られている。今後、当該寄生虫が犬の輸出入に伴って世界各地へと広がることを抑制するためには、各国の情勢に合わせた防疫対策が講じられていくことが必要であると思われる。

現代社会において、実際の症例を目の前にした場合、「特定の地域にのみ発生する感染症」という疫学的概念はリセットして、診察にあたることが良いのかも知れません。

現代社会において、実際の症例を目の前にした場合、「特定の地域にのみ発生する感染症」という疫学的概念はリセットして、診察にあたることが良いのかも知れません。

 

参考ページ:

http://veterinaryrecord.bmj.com/content/181/13/346.long


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