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身体的特徴から短頭種気道症候群のリスクを統計学的に予測する研究

投稿者:武井 昭紘

短頭種は、長頭種と比較して、呼吸器のトラブルを起こしやすく、短頭種気道症候群(brachycephalic obstructive airway syndrome、BOAS)と総称されるほどである。この疾患を発症する要因は、鼻孔や喉頭部の構造的異常などが挙げられるが、犬の「見た目」から将来的にBOASを起こすリスクについて予測する手法は明確に設定されておらず、身体検査(聴診、視診など)や画像診断(X線、内視鏡、CT、MRIなど)の所見を基に診断されることが通例である。

そこで、イギリスのケンブリッジ大学は、短頭種の外観的特徴とBOASの関連性について研究を行った。同研究には、604匹の短頭種(パグ189匹、フレンチブルドック214匹、ブルドック201匹)が参加しており、顔の各部位および胸腰部の長さを基にした計測値がデータ化された。

研究の結果、604匹のうち、BOASを呈している個体と相関関係が認められた測定値として、フレンチブルドックにおける①鼻と頭部の長さの比(CFR)、②鼻先から後頭部の長さと顔の幅の比(SI)、③首周囲の長さと胸囲の比(NGR)、④首と胸腹部の長さの比(NLR)、ブルドックにおける②および③がリストアップされている。なお、パグでは、上記の2犬種のように、「有意な測定値」は確認されていないが、②、④、両目の間の長さと顔の幅の比(EWR)がBOASの発症要因となることが示唆された(統計学用語としての「傾向」がある)。

このことから、短頭種の身体的特徴からBOASのリスクが予測できることが考えられる。今後、再現性(検査を実施するヒトが変わっても測定値に人為的な差が生じないこと)を高めるためのガイドラインが作成され、早い段階で、小動物臨床に応用されることに期待したい。

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成長期の個体にも応用できる測定方法が確立されることをねがっております。

 

参考ページ:

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0181928

 


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