「過体重・肥満の犬の心臓には負担がかかっている」
この表記は、獣医師会などの法人名義のホームページを含めて、インターネット上で簡単に閲覧することが出来る言葉であるが、理想体重以上の犬の心臓で起きている「病的現象」を詳細に解析して、明文化されたものは見受けられない。そこで、ワシントン州立大学とインディアナ州のパデュー大学は、BCS6以上の過体重における心機能を観察して、科学的データを明示する試みを行った。同研究には、理想体重(9段階評価でのBCS4~5)の犬17匹、過体重(9段階評価でのBCS6以上)の犬29匹が参加して、心エコー図検査および血液検査が実施されている。
研究の結果、理想体重のグループに比較して、過体重の犬では、以下に示す項目に有意差が認められることが明らかとなっている。
<過体重の犬における心エコー図検査所見>
1.拡張末期心室中隔壁厚(IVSd)の上昇
2.左室内径短縮率(FS)
3.左室駆出率(EF)の上昇
4.E/Aの低下
<過体重の犬における血液検査所見>
1.血清中アディポネクチン濃度の低下(ヒトでは生活習慣病に繋がるリスクがあると判断されることがある)
2.インスリン・グルコース比の上昇
3.炎症性サイトカインIL-8の上昇
上記のことから、「過体重の犬の心臓には負荷がかかっていること(同時に糖尿病リスクである代謝異常も起きていること)」が示されていると考えられる。よって、愛犬を理想体重(標準体型)で維持することは、心臓への負荷を軽減する効果があると言えるのではないだろうか。
参考ページ:
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.14775/full