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鎮静薬は使わない:入院ストレスを軽減することができる薬剤の研究

投稿者:武井 昭紘

犬猫を含めた小動物にとって、一部の例外を除いて、動物病院の中に居ることはストレスを受ける環境であると言える。特に、入院や手術となれば、ペットオーナーと離れる時間が長くなり、ペットに多大な精神的負担がかかることになる。そのため、ストレスを軽減する目的として、トランキライザーなどの鎮静薬やアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬を投与する場合がある。しかし、鎮静効果が強く発現してしまうと、麻酔に近い状態となり、個体(生体)に麻酔リスクを負わせることになるため、頻繁に当該薬を使用することは望ましくないと考えられる。

そこで、オハイオ大学は、ヒトのうつ病に使用される薬剤で三環系抗うつ薬に属さないトラゾドン(セロトニン2受容体拮抗および再取り込み阻害薬、serotonin 2 antagonist and reuptake inhibitor、SARI)に注目して、入院をしている犬のストレスの軽減効果について研究を行った。この研究には120頭の犬が参加し、コントロール群(60匹)とトラゾドン投与群(60匹)に分けられた。トラゾドン投与群では、4~12mg/kg q12hの用量(ただし、300mg/dose、600mg/日を超えない)でトラゾドンが使用された。両群は、トラゾドン投与から45分後および90分後の時点において、60秒間の行動観察が実施され、認められたストレス関連行動をスコア化することで、コントロール群とトラゾドン投与群を比較した。

研究の結果、コントロール群に比べて、トラゾドン投与群では唇を舐める動作、パンティング、泣き声などのストレス関連行動のスコアが有意に減少することが明らかとなった。このことから、セロトニンが入院中のストレスを軽減する効果があることとトラゾドンがセロトニンの効果を補助する可能性があると考えられる。

今後、トラゾドンの副作用に関しても調査されるようになり、既存の鎮静薬や三環系抗うつ薬よりも安全性が高いことが立証されれば、トラゾドンが入院中の犬猫のストレスを軽減する薬剤として常用される日が来るかもしれない。また、仮に、入院中に食欲が低下する症例の食欲維持にトラゾドンが有効であるといった研究データが発表されることになれば、トラゾドンが臨床現場に広まっていく可能性が高くなるのではないだろうか。

安全性が高のであれば、トラゾドンはストレス軽減のために使用しやすい薬剤として期待が持てると思います。

安全性が高のであれば、トラゾドンはストレス軽減のために使用しやすい薬剤として期待が持てると思います。

 

参考ページ:

http://veterinarymedicine.dvm360.com/trazadone-may-lessen-patient-stress-while-veterinary-hospital

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Gilbert-Gregory%20SE%5BAuthor%5D&cauthor=true&cauthor_uid=27875082


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