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伝染性腹膜炎を発症した猫に対するレムデシビルとGS-441524の効果を比較した研究

投稿者:武井 昭紘

いくつかの研究をみていると、猫の命を奪う恐ろしい感染症、伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis、FIP)には、ウイルスの増殖を抑える薬剤、例えば①GS-441524や②レムデシビル (GS-5734)が有効であるように思われる。そこで、疑問が浮かぶ。強力な感染症には効率の良い治療が求められる。①と②では、どちらがより有効な(効率が良い)のだろうか。

 

冒頭のような背景の中、カリフォルニア大学は、FIPと診断された猫18匹を9匹ずつの2つのグループに分けて、①または②を投与する研究を行った。なお、同研究では、①の用量は12.5~15mg/kg、②は25~30mg/kgであり、12週間毎日投与され、16週間の経過が追跡されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆①と②の効果◆
・①の生存率は55%(9匹中5匹)、②は77%(9匹中7匹)であった
・両群の生存率に有意差はなかった
・18匹のうち3匹は治療開始から48時間以内に死亡した
・この死亡例を除外すると①の生存率は83%(6匹中5匹)、②は77%(9匹中7匹)であった

 

上記のことから、①と②の効果は甲乙つけがたいことが窺える。しかし一方では、①に属する3例が48時間以内に死亡していることから、これを課題点とすれば、②の方が優勢とも捉えることができる。よって、今後、②を中心にして用法・用量に関するガイドラインが設定され、同薬を適応できる症例と、副作用などの面で適応すべきではない症例の判別基準が明確になり、FIP治療が効率化されていくことに期待している。

レムデシビルが効かなかった症例も居ることから、更に有効な薬剤を探求する研究が進められることを願っております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37632022/


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