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伝染性腹膜炎を発症した猫の腹部超音波検査の所見に関する研究

投稿者:武井 昭紘

致死的経過を辿る伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis、FIP)を発症した猫の一部では、腹水が認められる場合がある。つまり、FIPウイルスに感染することで、腹腔に病的変化が現れるのだ。そうであるならば、その変化を画像診断で検出できる可能性があると考えるのが妥当である。では実際のところ、どのような変化が起きて、検査所見として何が得られるのだろうか。無論、腹水は確認できるとして、他にFIPを示唆する所見はあるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、タフツ大学は、FIPと診断された、あるいは、FIPの疑いが非常に高い猫25匹を対象にして、彼らの腹部超音波検査の所見を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆FIPを発症した猫の腹部超音波検査◆
・22例で腹水が認められた
・20例でリンパ節の腫脹があった
・20例で肝臓に病的変化が確認できた
・その中で最も一般的な所見は肝腫大であった(13例)
・次いで肝臓の低エコー源性が続いた(12例)
・17例で腸管に病的変化(腸壁の肥厚、層構造の不明瞭化)が確認できた
・17例中13例で回盲接合部や結腸に病的変化が存在していた
・9例で脾腫が起きていた
・8例で腎臓に病的変化(腫大、層構造の不明瞭化、腎盂拡大、結節)が確認できた
・腎臓の被膜の内側が低エコー源性を示すという所見も得られた
・腸間膜や腹膜のエコー源性の変化や肥厚を認める症例もいた
・23例、92%の症例は2つ以上の異常所見を抱えていた

 

上記のことから、FIPを発症した(あるいは疑いがある)猫の腹部超音波検査には、腹水とは別の異常所見がみられることが分かる。それは言い換えると、診断のヒントになる所見と捉えることができる。よって、今回紹介した研究を参考に超音波検査の重要性を見つめ直し、FIPの診断精度を向上させて頂けると幸いである。

リンク先の論文にて、実際の超音波検査画像をご覧ください。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38095890/


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