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アンドロゲンを分泌する副腎皮質の腫瘍が発生した猫8例に関する報告

投稿者:武井 昭紘

9歳齢、去勢オスの猫に起きた行動変化に関する症例報告の一つにおいて、同居猫への攻撃性、スプレーを繰り返すという問題行動の原因はテストステロンとアンドロステンジオンを産生する副腎皮質腺腫であったという。つまり、副腎の病気は、罹患猫の性格や行動に大きな影響を与えていると考えられるのである。そして、その性格や行動の問題点は、去勢手術によって解決を試みられることがあるのだ。しかし、冒頭の症例報告が示すところによれば、副腎の病気に伴う性格や行動の変化は去勢手術では治せないということになる。即ち、問題行動の原因追究において、副腎の病気と性ホルモンの影響を鑑別する必要があるのだ。では果たして、副腎の病気を疑う異常所見とは一体何であろうか。

 

冒頭のような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、過去に不妊・去勢手術を受けて、且つ、アンドロゲンを分泌する副腎皮質腫瘍と診断された猫8匹の臨床病理学的所見を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆アンドロゲンを分泌する副腎皮質腫瘍と診断された猫8匹の臨床病理学的所見◆
・7匹に不適切な排尿と鼻を刺激するような尿臭が認められた
・4匹に過剰に鳴く行動、3匹に攻撃性が現れた
・5匹のオス(全例)に陰茎棘の発達がみられた
・1匹のメスに陰核の肥大がみられた
・7匹でテストステロンの異常な上昇を認めた
・1匹でアンドロステンジオンの異常な上昇を認めた
・副腎の病理検査をした5匹(1匹は安楽死)で副腎皮質腺腫や副腎皮質癌が確認された
・副腎腫瘍の手術を受けた猫4匹でホルモン濃度の上昇が解消した
・これらの猫は1年以上生存した
・トリロスタンで内科的に管理された1匹ではホルモン濃度の異常が解決しなかった

 

上記のことから、副腎の病気に伴う猫の性格や行動の変化は、身体検査およびホルモン検査で疑えると言える。また、外科手術によって1年以上(2年近く生存した猫も居る)生存することが分かる。よって、攻撃性、スプレー、不適切な排尿を示した猫では陰茎棘・陰核のチェックをし、異常が認められればホルモン検査を検討することが望ましいと思われる。加えて、不妊・去勢手術で問題行動が解決されない猫の診察では、副腎腫瘍の可能性を探ることをお薦めする。

外科手術を受けた猫の中には、臨床症状が一時的に消失するも、その後再発するケースが存在するとのことです(右副腎が肥大してたようですが、これ以上の医療費負担はできないということで治療は行っておりません)。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1158142/full


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