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去勢手術を受けた猫に認められた行動変化とその原因となった腫瘍

投稿者:武井 昭紘

去勢手術を受けたオス猫は、行動や性格(オーナーが感じる印象としての性格)が変化することがある。具体的には、性ホルモンの影響による繁殖行動および縄張り意識の減少から、落ち着いた感じ(攻撃性が弱まった感じ)になったり、スプレーをしなくなるのだ。しかし、どうやら、これらの変化は「復活」することがあるようなのである。ある病気を患った個体では—–。

 

その症例を報告したサンパウロ大学と動物病院らによると、9歳齢の猫(去勢オス)が同居猫への攻撃性を示し、スプレーを繰り返すという主訴で来院したという。診察の結果は、陰茎棘の発達、右副腎の腫大、そして、ACTH刺激試験で性ホルモンの濃度が上昇する所見。副腎腫瘍を疑うものであった。そこで、本症例は副腎摘出術に臨んだとのことである。後日、病理検査によって、テストステロンとアンドロステンジオンを産生する副腎皮質腺腫の存在が確認された。手術から3ヶ月、陰茎棘は消失し、スプレーの頻度が大幅に減少したそうだ。

上記のことから、今回紹介した症状を呈する去勢済みの猫を診察する際は、性ホルモンを産生する腫瘍に罹患している可能性を探ることが重要だと思われる。読者の皆様が勤める動物病院には、該当する猫が居るだろうか。大学らは本症例の病態を稀と述べるが、可能性はゼロではないと捉え、日々の診療業務にあたって頂けると幸いである。

本症例は、過度に鳴き声を上げるといった症状も呈していたとのことですが、術後にその頻度は大幅に減少したそうです。

 

参考ページ:

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/2055116920981247


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