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胸腰部の椎間板ヘルニアに対する手術を受けたフレンチ・ブルドッグの経過を追跡した研究

投稿者:武井 昭紘

ある研究によると、胸腰部の椎間板ヘルニア(Thoracolumbar intervertebral disc extrusions、TL-IVDE)
を発症した①ダックスフンドと②フレンチ・ブルドッグの転帰は、①の53%(181匹中96匹)が自立歩行をするまでに回復したのに対して、②は僅か33%(15匹中5匹)に留まったという。つまり、②のTL-IVDEは予後が悪いと言えるのだ。では、その予後の悪さとは、どれ程のものなのか。実際の数値で客観的に把握することは重要だと思われる。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学らは、深部痛覚が消失する深刻なTL-IVDEを発症して、高次診療施設(2軒分のデータ)で外科手術に臨んだフレンチ・ブルドッグの診療記録を解析する研究を行った。すると、6年間(2015年~2020年)分、37例のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆TL-IVDEに対する手術を受けたフレンチ・ブルドッグの経過◆
・入院期間は中央値で10日(7.0~15.5日)であった
・38%の症例(14例)が退院までに深部痛覚を取り戻した(③)
・6%(2例)が歩行可能となった(④)
・27%が入院中に安楽死となった
・T3-L3にヘルニアがある症例は21例であった(⑤)
・L4-S3にヘルニアがある症例は16例であった(⑥)
・⑤(52%)に比べて⑥(19%)では深部痛覚は回復しづらかった
・MRI検査の所見が変化していくことと深部痛覚を取り戻すことに関連はなかった
・退院後の追跡1ヶ月間(中央値)で3例が深部痛覚を取り戻した(③と合わせると17例、46%となった)
・退院後の追跡1ヶ月間(中央値)で5例が歩行可能となった(④と合わせると7例、19%となった)

 

上記のことから、手術後に歩行可能となる症例が少ないことが窺える。また、約3分の1の症例が安楽死となっていることも分かる。よって、今後、安楽死の件数を減らして退院件数を増やし、且つ、歩行可能となる症例数を上昇させる治療法について議論・検証され、フレンチ・ブルドッグのTL-IVDEの予後が改善することに期待している。

⑤と⑥の回復の差は統計学的に有意だとのことです。

 

参考ページ:

https://bvajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/vro2.61


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