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多飲多尿と高Ca血症を呈しリンパ腫が疑われるも化学療法に反応しない犬の1例

投稿者:武井 昭紘

アメリカはテキサス州オースティン。2023年5月中旬。そこに、異常なまでの飲水と排尿を繰り返す犬が居た。名前はロイス。これらの症状は、足に発生した腫瘤の診察を明日に控えた前日から始まったという。血液検査が実施される。高Ca血症が認められた一方で、アジソン病とクッシング症候群は否定的であった。以降数週間、多岐に渡る検査が進められた。しかし残念ながら、全ての検査で手掛かりは掴めなかった。次第に重症化する消化器症状が加わる。経鼻チューブも吐き戻すくらいの酷い状況。一刻を争う事態となっていた。除外診断という形で、リンパ腫と判断された。腫瘍科の専門医のもとで、化学療法が始まった。だが、治療への反応は芳しくない。症状は更に悪化したという。

 

迷走する中で、可能性を排除するために、ある寄生虫に関する検査が行われた。結果は陽性。彼(ロイス)は、Heterobilharzia americanaに感染していた。同病原体は、淡水域に生息するカタツムリに寄生する吸虫で、このカタツムリに接触した動物の皮膚から感染をする。そして、血流に乗って腹部へ移動したのち、そこで卵を産んで動物に消化器症状を齎す特徴を有する。5月30日。やっと突き止めた元凶。治療のスタートラインに辿り着くことができた。

 

しかし、ここで問題が勃発する。Heterobilharzia americana感染症の治療薬に800ドル(約11万円)。ICUでの管理も含めて1日の入院費は1300ドル(約18万円)。これまでの検査で20000ドル(約277万円)。既にペット保険の補償上限額を超えていたのだ。そこで、オーナーは一念発起する。「GoFundMe」というWebページを開設。当座の医療費を寄付で賄う決断をした。オーナーは語る。彼の生存確率は50%だと。今自宅へ帰れば生きてはいけないだろうと。元凶が特定された現在、治療が成功することを願っている。

ロイスの同居犬であるステラも寄生虫検査陽性となってしまったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.kxan.com/news/texas/a-snail-causes-an-austin-womans-dog-to-become-severely-ill-racks-up-thousands-in-vet-bills/


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