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病理検査を実施した子猫におけるティザー病の有病率を算出した研究

投稿者:武井 昭紘

ティザー病はClostridium piliformeを病原体とし、ハムスター、モルモット、ウサギなどのエキゾチック動物を始め、犬や猫、産業動物では馬が発症する感染症として知られている。また、通常、不顕性感染だが、免疫力が低下した動物では食欲低下、削痩、心筋炎、肝炎、腸炎、下痢などを起こすと言われている。しかし、当該疾患は、猫の主な感染症と認識されているものではなく、その感染実態に関する情報は乏しいのがげんである。

 

冒頭のような背景の中、世界の獣医科大学らは、カリフォルニア大学付属動物病院で過去22年間(2000年〜2021年)に剖検された、生後6ヶ月未満の子猫を対象にして、ティザー病の有病率を算出する研究を行った。なお、研究対象とされた子猫は、大腸炎、肝炎、心筋炎を患っている個体である。すると、37例のデータが検索でヒットし、以下に示す事項が明らかになったという。

◆子猫のティザー病の有病率と実態◆
・半数以上の19例において少なくとも一つの臓器からC. piliformeと思しき菌の存在を確認した(シュタイナー染色)
・これら感染個体の年齢は生後7〜42日だった
・18例はオーナーが居ない個体であった
・大腸炎が最も一般的であった(18例)
・次に肝炎が続いた(11例)
・2例で肛門周囲の皮膚炎からC. piliformeが検出された
・PCR検査では結腸・肝臓サンプルの50%、心臓サンプルの10%で陽性となった
・PCR検査よりシュタイナー染色の方が感度が高かった
・15例は併発疾患を有していた
・免疫力の低下が発症に関与していたと推測できる

 

上記のことから、大腸炎、肝炎、心筋炎を患った子猫でティザー病は一般的であると考えられる。また、免疫力を下げるイベントが引き金になることがあると言える。よって、母猫に見離されたり、劣悪な環境で発見されたり、感染や栄養障害を経験し免疫力の低下が疑われる子猫の診察では、ティザー病を鑑別リストに追加することが望ましいと思われる。

PCR検査に使用されたサンプルはホルマリン固定またはパラフィンで包埋された組織だとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36772788/


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