ニュース

細菌性肺炎の犬における肺炎随伴性胸水の発生状況を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

ある研究によると、肺炎を発症した動物の胸腔内には胸水が溜まることがあるという(肺炎随伴性胸水)。では、どのような条件下で、この胸水は発生するのだろうか。そして、その発生要因を把握することは、肺炎の治療に新たな見解を齎すのだろうか。細かく分類される各種の肺炎を一つひとつ分析し、肺炎に伴う胸水の意味を知ることが重要である。

 

冒頭のような背景の中、ベルギーのリエージュ大学は、過去4年間に大学附属動物病院で細菌性肺炎と診断された犬130匹の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究の対象となった症例は、細菌性肺炎が疑われるX線検査所見に加えて、CRPの上昇、気管支や肺胞の洗浄液による細菌培養の陽性、抗生剤を用いた診断的治療に反応することの何れかが該当しているとのことである。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆細菌性肺炎の犬における肺炎随伴性胸水の発生状況◆
・母集団の約34%(40例以上)に胸水を認めた
・このうち4例のみ胸水が採取された
・2例が変性性漏出液であった
・残りの2例は敗血症に伴う滲出液であった
・肺炎随伴性胸水の有無は転帰を左右していないようであった

 

上記のことから、細菌性肺炎の犬に起きる胸水は一般的な現象であり、それ自体で今後の経過を予測することはできないことが伺える。よって、当該疾患の診察で胸水を発見しても慌てず、治療に専念して頂けると有り難い。

本研究では、寄生虫性と非細菌性の肺炎、肺腫瘍の症例は除外されているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1144148/full


コメントする