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卵巣子宮全摘出術に臨んだ猫に対するメラトニンの効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

犬猫に適応する外科手術のうち、去勢手術や卵巣子宮全摘出術(Ovariohysterectomy、OHE)は比較的侵襲度が低く、痛みが軽度であると言われている。しかし、そうであっても、これらの術式は歴とした手術であって、痛みの原因となるストレスや炎症を彼らに齎すことは否定できないのが現状となっている。つまり、そのストレスや炎症を軽減することが獣医学の課題なのである。

 

冒頭のような背景の中、中東はイランのシーラーズ大学は、抗炎症効果を持つとされるメラトニンに着目して、OHEを受けた犬に同成分を投与して有効性を評価する研究を行った。なお、この研究では、25匹の犬を5匹ずつの5つのグループ(①手術もメラトニン投与もしないコントロール群、②メラトニン投与のみをする群、③OHEのみを実施する群、④メラトニン投与と麻酔のみをする群、⑤メラトニン投与とOHEを実施する群)に分けられている。また、彼らの血液サンプルに含まれるメラトニン、コルチゾール、セロトニン、α-1-酸性糖タンパク質(AGP)、血清アミロイド A(SAA)、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の濃度が測定されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆OHEに臨んだ猫に対するメラトニンの効果 ◆
・①に比べて②④⑤のメラトニンおよびセロトニンが有意に高かった
・③に比べて⑤のコルチゾールが低かった
・急性期タンパク質とサイトカインはOHE後に大幅に増加した
・③に比べて⑤のSAA、CRP、IL-10は有意に低かった
・②に比べて④の急性期タンパク質とサイトカインは有意に高かった

 

上記のことから、麻酔や手術に伴うストレスや炎症をメラトニンは抑制することが窺える。よって、今後、メラトニンを組み込んだ麻酔プロトコルが確立され、犬に優しいOHEが実現することを期待している。

メラトニンは、0.3 mg/kgの用量で麻酔・手術の前日から当日を挟み、術後3日目まで経口投与されております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36913177/


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