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7ヶ月齢の子猫を襲った謎の乳腺の腫脹

投稿者:武井 昭紘

動物病院に連れて行く金銭的な余裕が無いオーナーから別のオーナーへと引き取られた猫の乳腺は腫れていた。彼女は7ヶ月齢。以前のオーナーは妊娠しているかも知れないと疑っていた。しかし、引き取った後にも、乳腺は更に大きく、硬くなっていった。本当に妊娠なのか。それとも深刻な病気でも抱えているのか。現在のオーナーが、マサチューセッツ州のタフツ大学付属動物病院へと彼女を連れて行った。

腫れている乳腺の周囲は壊死組織で埋め尽くされていた。そして、細菌感染もしているようであった。獣医師は、性ホルモン(プロゲステロン)による乳腺過形成が急激に起きたことが原因と推定した。つまり、不妊手術に臨んで、プロゲステロンの影響を減らすことが治療だと考えたのだ。しかし、他にも問題があった。PCV16%と重度の貧血を抱えていたである。手術に貧血と感染に対する治療、加えて、そのための入院。さすがに現在のオーナーにも、そこまでの余裕はなかった。抗生剤と鎮痛剤の投与で、治療方針を検討した。その間に、PCVは11%に低下してしまった。

この事態に、大学教員と動物スタッフが立ち上がる。本症例と適合する猫を飼う彼らがドナーに名乗りを上げた。高額な輸血療法の経済的負担はなくなり、輸血後のPCVは17%へと回復した。いざ、外科手術へ。壊死組織は取り除かれ、不妊手術が実施された。そして、その日のうちに彼女は退院した。1週間後の再診。PCVは20%に上昇。オーナーの息子と遊べるまでに元気を取り戻した。

果たして、この乳腺過形成と細菌感染は、稀な子猫の病気なのだろうか。今後、有病率を算出する研究が進み、発症リスクの高い子猫の特徴が明らかになることを期待している。また、その特徴を基に、早期診断・早期治療が実現することを願っている。

回復したことを確認した時点で、ワクチン接種も完了したそうです。

 

参考ページ:

https://vet.tufts.edu/news-events/news/bo-knows-survival


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