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心肺蘇生を受けた犬猫のデータ700例以上を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

心肺停止に陥った犬猫には蘇生処置が適応される。しかし、全ての症例が助けられるとは限らない。一方で、命が助かる症例も居る。では実際のところ、どれくらいの割合で命を落とし、あるいは、息を吹き返すのか。

 

冒頭のような背景の中、世界各地の獣医科大学らは、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアに拠点を構える動物病院16軒、700例以上の犬猫の心肺蘇生処置に関するデータを解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆心肺蘇生を受けた犬猫700例以上のデータ解析◆
・症例の約30%が自己心拍再開を達成した
・犬の12%、猫の13%で20分以上、心臓の拍動が継続した
・犬の3%、猫の2%が無事に退院した
・心肺蘇生を中止した最多の理由は「犬猫のオーナーからの申告」であった(母集団の63%)
・心肺停止に陥った原因として一般的なものは呼吸トラブル(20%)、心不全(12%)、出血(11%)であった

 

上記のことから、心肺蘇生をすることになった犬の大部分は亡くなることが窺える。しかし一方で、数%の症例は助かることも分かる。加えて、自己心拍再開を達成した症例の全てが命を取り留める訳ではないことも読み取れる。よって、助けられる可能性が少ないものの、「数%」の希望に懸けて心肺蘇生を試みることが重要だと言える。そして、自己心拍再開となった後も油断することなく、犬猫の状態を安定させる処置とモニタリングが途切れないように細心の注意を払うことが大切だと思われる。また、自己心拍再開を達成した症例が無事に退院する確率を上げる治療法を特定し、または、開発する研究が進められることに期待している。

症例のデータは一次診療施設、大学付属動物病院の双方から集積されているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36573548/


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