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変形性関節症の猫に対するサプリメントの効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸は、軟骨の形成を促進する物質として有名で、関節疾患の予防やケアを目的に開発されたサプリメントに配合されていることが多い成分である。つまり、この2つの成分を摂取すると、関節の健康状態を良好に保ち、引いては、運動能力(活動性)の向上が目指せると考えられているのだ。では実際のところ、小動物臨床において「その効果」は発揮されるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ノースカロライナ州立大学は、変形性関節症(degenerative joint disease、DJD)を患う猫59匹を対象にして、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸の効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、猫たちを2つのグループ(①プラセボ群、②サプリメント投与群)に分け、オーナーと獣医師の双方によって、彼らの活動性や疼痛、そして生活の質(QOL)が評価されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆変形性関節症の猫に対するサプリメントの効果◆
・両群の全ての猫の78%において疼痛が改善されたとオーナーが評価した
・獣医師の評価でも両群の猫の疼痛が有意に改善したという結果になった
・②に比べて①の猫の方がオーナーの評価する疼痛のスコアが有意に改善した
・獣医師の評価する疼痛スコアとQOLでは両群に有意差はなかった
・全体的な活動性は両群で違いは認められなかった
・ある特定の時間で区切った時の活動性は②より①の猫で高かった
・最も活動性の低い猫だけで構成された母集団にすると①よりも②でより活動的になった

 

上記のことから、活動性が極端に低い猫を除けば、グルコサミンおよびコンドロイチン硫酸には「期待する効果」は認められないと言える。よって、今後、同サプリメントが有効な症例の特徴を突き止め、それを判別する手法を考案する研究が進み、効果が期待される症例のみにサプリメントを処方するといった効率的で、且つ、経済的な診療が実現することを願っている。

サプリメント投与群の猫は、2週間のプラセボの後に6週間サプリメントを投与されたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34719996/


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