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特発性巨大結腸症の猫の臨床検査所見と治療経過を統計学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

便秘が継続する期間の長さは、その症状が慢性的であるか否かを判定する指標となっており、特発性巨大結腸症を疑う所見の一つとされている。また、同症状の長期化は「不可逆性」、つまり、「治療への反応性が乏しいこと」と関連していると言われているのだ。では実際のところ、特発性巨大結腸症に伴う臨床症状(便秘)の継続期間は、当該疾患の治療成績に影響を与えているのだろうか。そして、その期間が長い罹患猫の結腸には何らかの変化が起きているのだろうか。即ち、特発性(原因不明)と称される当該疾患の原因の一端を明らかにすることができるだろうか。

 

冒頭のような背景の中、アフリカおよび中東の大学らは、①臨床上健康な猫および特発性巨大結腸症と診断された猫の診療記録を比較する研究を行った。なお、特発性巨大結腸症と診断された猫は、②便秘の期間が6ヶ月未満の猫と③6ヶ月以上の猫の2つの群に分けられて解析されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆特発性巨大結腸症の猫の臨床検査所見と治療経過◆
・①に比べて②③の年齢層は有意に高かった
・①に比べて②③の結腸の最大径(MCD)は有意に大きかった
・①に比べて②③の結腸の最大径と第5腰椎の比(MCD/L5L)は有意に大きかった
・②に比べて③のMCDとMCD/L5Lは有意に大きかった
・①に比べて③の結腸の平滑筋層は有意に厚かった
・①に比べて③の結腸には神経節細胞が有意に少なかった
・①に比べて③の結腸では壊死した筋細胞が有意に多かった
・③の約94%は内科治療に反応しなかった(外科手術で良好な結果となった)

 

上記のことから、便秘が継続する期間の長さは、特発性巨大結腸症の猫の治療反応性(内科治療に対するもの)を左右していることが窺える。また、便秘が長期化することで、結腸の平滑筋が障害されていることも分かる。よって、今後、便秘を呈する猫の結腸の筋層に起きる障害(機能異常)を防止する治療法、および、起きてしまった機能異常を回復させる治療法が開発され、当該疾患で悩み苦しむ猫とオーナーが内科治療で救われるようになることを期待している。

実際の病理学的な所見は、リンク先の論文をご参照ください。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1033090/full


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