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肺高血圧症を続発した僧帽弁疾患を抱える犬に起きる肺動脈の変化の謎に迫った研究

投稿者:武井 昭紘

肺高血圧症(pulmonary hypertension、PH)は、犬の僧帽弁疾患(Degenerative mitral valve disease、DMVD)に起因する病態で、肺動脈の肥厚を伴うことが一般的だとされている。また、この肥厚は、肺動脈を構成する平滑筋のアポトーシスが抑制されることに起因すると考えられているのだ。では実際のところ、DMVDの犬の肺動脈では一体何が起きているのだろうか。

冒頭のような背景の中、チュラロンコーン大学は、①臨床上健康な犬、②PHを伴わないDMVDの犬、③PHを伴うDMVDの犬の肺組織を採取し、病理組織学的および分子生物学的に解析する研究を行った。すると、①に比べて②③の肺動脈は有意に肥厚し、平滑筋細胞の数も多いことが判明したという。さらに、アポトーシスを促進するタンパク質であるBaxとカスパーゼ-3および8が陽性となる細胞の割合は③よりも②で多く、アポトーシスを抑制するタンパク質であるBcl2が陽性となる細胞の割合は②よりも③で多いことが分かったとのことである。

上記のことから、本研究の結果は、冒頭に記した説の正しさを示唆しているものと思われる。つまり、PHを伴うDMVDの犬の肺動脈では平滑筋のアポトーシスが抑制されていると考えられるのだ。よって、今後、このアポトーシスを促進する薬剤が開発され、その有効性が認められるとともに、循環器疾患に対する新しい治療法が世界的に普及することを願っている。

アポトーシスが抑制させる原因(キッカケ)についても詳細に分析されることに期待します。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35286943/


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