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肝・胆道系疾患を抱えていない犬の総胆管に纏わる数値をCT検査で測定した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の肝臓・胆道系疾患において、総胆管(Common bile duct、CBD)の画像診断は重要な位置を占めている。そのため、CBDの直径を測定し数値として客観化するべく、エコー検査やCT検査が行われるのだ。しかし、超小型〜超大型を擁する犬という動物種では、測定値の参照範囲と彼らの体重・体格の相関関係は不明なままである。

 

そこで、韓国の大学および動物病院らは、肝臓・胆道系疾患を抱えていない犬280匹以上のCT検査を実施し、CBDの直径を測定する研究を行った。なお、同研究では、測定ポイントを①肝門部、②十二指腸乳頭、③ ①と②の中間地点の3ヶ所に設定している。また、体重によって犬をクラス1〜4(1kg以上〜5kg未満がクラス1、5kg以上〜10kg未満がクラス2、10kg以上〜15kg未満がクラス3、15kg以上〜30kg未満がクラス4)に分類している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬のCBDの直径と体重・体格の関係性◆
・①の参照範囲
クラス1:1.69 ± 0.29 mm
クラス2:1.92 ± 0.35 mm
クラス3:2.20 ± 0.43 mm
クラス4:2.79 ± 0.49 mm
*グループ間の有意差あり

・②の参照範囲
クラス1:2.33 ± 0.34 mm
クラス2:2.90 ± 0.36 mm
クラス3:3.35 ± 0.49 mm
クラス4:3.83 ± 0.50 mm
*グループ間の有意差あり

・③の参照範囲
クラス1:2.06 ± 0.25 mm
クラス2:2.43 ± 0.37 mm
クラス3:2.74 ± 0.52 mm
クラス4:3.14 ± 0.44 mm
*グループ間の有意差あり

 

上記のことから、犬のCBDの直径は体重が大きくなるにつれ太くなることが分かる。しかし、大学らは述べる。これらの数値と大動脈の直径の比(CBD:Ao比)は、犬の体重に影響されることなく一つの参照範囲に纏まると。すなわち、①を用いると0.34 ± 0.05、②では0.47 ± 0.06、③では0.42 ± 0.06になるという。よって、今まさに診察をしている犬の総胆管が拡張しているか否かを判断し兼ねている獣医師(特に新人獣医師)は、本研究が提唱するCBD:Ao比を参考にして頂けると幸いである。

30kg以上の犬にもCBD:Ao比が適応できるか、追加の研究が進むことに期待します。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1137400/full


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