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鎮静や麻酔を掛けた犬の死亡例について調べたイギリスの研究

投稿者:武井 昭紘

治療のためであれ、去勢・不妊手術のような予防的措置であれ、犬の手術を実施する際には必ず麻酔をすることになる。しかし、この麻酔は「100%安全である」と保証されたものではない。多かれ少なかれリスクが潜んでいるのだ。無論、命の危機に瀕した病気の治療のためとあれば、そのリスクを覚悟の上で手術に臨むかも知れない。だが一方で、去勢・不妊手術となれば、そのリスクは「大きな心配の種」になることが推察できる。では果たして、麻酔に潜むリスクとはどれ程のものなのか。数値(データ)として、それを把握しておくことが大変に重要である。

 

冒頭のような背景の中、王立獣医科大学は、鎮静や麻酔を掛けた犬の死亡例に着目して、大規模臨床データベースVetComapssに登録された過去3年分の麻酔記録15万件以上のデータを解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆鎮静や麻酔を掛けた犬の死亡例◆
・約9万件が去勢・不妊手術のための麻酔であった
・①麻酔から48時間以内の死亡は10000匹に10匹の確率(0.1%)で起こった
・②麻酔から2週間以内の死亡は10000匹に14匹の確率(0.14%)で起こった
・去勢・不妊手術に限ると①は0.006%、②は0.009%であった
・ロットワイラー(約8倍)およびウェスティ(約5倍)の死亡リスクが高かった
・ASAスコアが1~2のグループに比べて3~5のグループの死亡リスクは約5~19倍高かった
・緊急ではない手術と比べて緊急手術での死亡リスクは約14倍高かった
・0.5~1.5歳に比べて5~9歳未満は約5倍、9歳以上は約13倍、死亡リスクが高かった
・中頭種比べて長頭種の死亡リスクが高かった(約4倍)

 

上記のことから、少ないとは言え、去勢・不妊手術後に死亡する犬が存在していることが分かる。また、犬種、年齢、ASAスコアなど特定の条件で死亡リスクが上昇することが窺える。よって、今後、去勢・不妊手術後に犬が死亡する原因、そして特定の犬種で死亡リスクが高い原因を特定する研究が進むことに期待している。また、条件に該当する犬に麻酔を掛ける獣医師は、そのオーナーと充分にリスクについて話し合い、麻酔および手術などの治療方針を決定して頂けると幸いである。

同研究では、コッカースパニエルの死亡リスクが低いことも分かっております(約10倍)。

 

参考ページ:

https://www.rvc.ac.uk/Media/Default/VetCompass/Infograms/220901%20anaesthesia%20death.pdf


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