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ステロイド剤に代わるタンパク漏出性腸症の犬に対する食餌療法に関する研究

投稿者:武井 昭紘

タンパク漏出性腸症(protein-losing enteropathy、PLE)は、消化管内にタンパク質が漏出して血液中のタンパク質濃度が低下する疾患で、ステロイド剤によって治療されることが一般的である。しかし、ステロイド剤の投与には副作用が付き物で、その副作用が発現した症例では治療方針の変更を余儀なくされてしまうのが現状である。一方、話は変わるが、子供(ヒト)の炎症性腸疾患には、ステロイド剤と同等の効果があるとしてModulen IBDと呼ばれる液体状の経腸栄養食が使用されるという。つまり、炎症を伴った犬のPLEにもModulen IBDが利用できる可能性があると仮定できるのだ。

そこで、王立獣医科大学(RVC)は、内視鏡検査の際に経食道チューブを設置されたPLEの犬5例を対象にして、彼らにModulen IBDを給与する研究を行った。なお、同研究では、3~4日をかけて安静時エネルギー要求量を満たすように給餌され、いずれの症例にもステロイド剤を適応しない形式が採用されている。すると、全例が食欲不振から回復し、自発的に加水分解タンパク質のフードを食べられるまでになったとのことである。また、統計学的な有意差は認められないものの、食餌療法開始から2~3日後には、症例の80%で血清中グロブリンおよびコレステロール濃度が、60%で血清中アルブミン濃度が改善したという。

上記のことから、Modulen IBDは、ステロイド剤に依存することなく犬のPLEを治療する手段になり得ることが窺える。よって、今後、Modulen IBDを長期に給与した時の経過をデータ化する研究が進み、安全性と有効性の確認がなされ、新しい治療法の確立へと繋がることを期待している。

Modulen IBDは、成犬が必要とする栄養素およびPLE症例が必要とする栄養素のいずれも満たしているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35739930/


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