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ボーダー・コリーの特発性てんかんに関する疫学を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

犬全体の有病率が0.6~0.75%とされている特発性てんかん(idiopathic epilepsy、IE)は、とりわけボーダー・コリーにおいて「その割合」が高くなっている。そのように報告する研究がある。では果たして、彼らのIEの特徴(疫学)とは一体・・・。それを明らかにすることは、「犬種ごとに異なるかも知れないIE」を、より深く理解するキッカケになると思われる。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学らは、過去5年間にて少なくとも1度は高次診療施設の神経科専門医の診察を受けたIEのボーダー・コリー100匹以上を対象にして、彼らの診療記録とオーナーに回答を依頼した問診票のデータを解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆ボーダー・コリーのIEに関する疫学◆
・発症年齢は中央値で33.5ヶ月であった(最も若齢で6ヶ月)
・群発発作や重積を経験した症例(①)の発症年齢は有意に若かった
・約74%の症例が内科的治療を受けていた(②)
・そのうち40%が1種類の抗てんかん薬(antiseizure medication、ASM)を処方されていた
・60%は2種類以上のASMを処方されていた
・②の80%以上にフェノバルビタールが処方されていた
・②の23%に4つ以上の副作用が確認された
・①のQOLスコア(オーナーが回答した問診票による)は有意に低下していた
・そのスコアの減少率は中央値で30%であった(約40%のオーナーは50%以上の低下を報告している)
・QOLスコアとASMの関連性は不明確であった

 

上記のことから、IEは、ボーダー・コリーのQOLが大きく低下させることが窺える。また、治療を受けた症例の約4分の1では、副作用が頻発している様子が見て取れる。よって、今後、彼らのQOLを改善し、且つ、副作用のリスクが少ない治療法を考案する研究が進み、IEのボーダー・コリーおよびオーナーが安心して日々を暮らせる未来が訪れることを期待している。

QOLスコアの中央値は、10点満点中7点だったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.880318/full


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